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22 後援会たより No.35「ものづくりに学んで」 工学部機械工学科教授樋ひ野の励れい先生 昨年の9月に工学部機械工学科に着任しました。もともと関西で生まれ育ったのですが、昨年までの12年間は、東海地方に居ました。久しぶりに関西に戻ってきたことになります。 幼いころからものを作るのが好きで、その思いのまま大学では機械工学を学びましたが、当時はまさか大学で教えることになろうとは夢にも考えていませんでした。大学での勤務は20年になりますが、ようやく形になってきたと感じています。 私の専門分野は加工学です。機械工学では、いわゆる四力と呼ばれる4 つの力学を学びます。加工学は、ものの作り方や、そのために使われる機械や道具、そして何よりも大事なのは、その原理について学びます。そのときに、これらの4 つの力学の知識を総動員します。機械工学科で学ぶことの集大成と言っても言い過ぎではないでしょう。覚えなくてはならないことが多いのは間違いないですが、学ぶことで身の回りのものがどうやって作られているか、なぜそんな形をしているのかが分かります。工夫次第では、世の中にはなく自分が欲しいと思っているものを作ることも決して不可能ではありません。学生諸君には、しっかりと学んで欲しいと願って、いつも授業に臨んでいます。 大学のカリキュラムで、高等学校までには経験できないことは、研究を通じて学ぶことでしょう。研究は、それまで誰も考えたことがないことに取り組んだり、誰も分からなかったことを明らかにしたりすることが求められます。とは言っても、そんなことが簡単にできる訳もなく、こつこつと諦めずに行うこと自体が大事なのだと思います。 私は、生産システムを研究しています。生産システムを一言で語ることは、決して簡単ではないのですが、始めのうちは、自動車やテレビをつくる工場を想像してもらえば良いと思います。研究でも、工場でのもの作りをうまく行うための規則や仕組みを明らかにしたり、ときに新たに決めたりすることに取り組んでいます。そんな生産システムの研究のひとつにスケジューリングがあります。私たちも日々の生活のなかでスケジュールを考えることが多くありますね。たとえば、宿題をやる時間や、バイトや友達と遊びに行く時間を決めることは、毎日の生活のなかで自然に行っているのではないでしょうか。企業でも事情は全く同じです。いつ部品や材料を関連の企業から納めてもらうか、いつ自分の工場の機械を使って加工や組み立てを行うかを決めることは、無駄なく効率的にものを作る上でとても大切になります。 このスケジューリングと呼ぶ行為は、数式を使って表すことができます。それも三角関数や対数などといった特殊なテクニックを使わずに、連立一次方程式によって表されます。たとえば、x とy の2 つの文字で表される変数があってそれらの間に、x+y=1、x-y=3 という関係があったとき、この2 つの関係を満たすx とy の値を求めるという問題と同じことを考えます。この例では、x=2、y=-1 と値を求めることができます。スケジューリングの特徴は、変数が数百、数千と多いことに加えて、それらの間の関係式が、変数の数だけ存在しないことにあります。先の例では、x とy という2 つの変数に対して、x+y=1 とx-y=3 のように関係式も2 つあるから、x=2, y=-1 という一組の値を求めることができるのです。それがスケジューリングの場合には、変数の個数より関係式の個数が少ないのです。理屈の上ではいくつも値の組み合わせを考えることができることになります。そのことが、かえってスケジュールを決めるのが難しくします。我々も、宿題をいつやるかと聞かれると、いくつも答えがあって決めるのが難しいのと同じです。ただし、宿題の提出日に遅れるような計画はだめです。このようなスケジュールは、与えられた関係式のどれかを満足していないことに対応するのですぐにばれてしまいます。 これまでにも、この科目は何のために学ぶのだろうと考えることは決して少なくないと思います。研究は、その答えでもあります。そうか、中学で学んだことはこんなところで役に立つのだと気づかされるのも、研究の役割なのかもしれません。でも、学生時代には、これをやって何になるのだろうとは、あまり深く考えないことも大切だと思います。目の前にあることに意味を求めずただひたすら一生懸命に取り組むことは、将来、きっと役に立つことがあると思いますし、何よりも良い思い出になるでしょう。本学で出会う学生諸君と一緒に何か新しいことに取り組めたら良いなと思います。プロフィール1988 年 神戸大学工学部機械工学科 卒業1990 年 神戸大学大学院工学研究科機械工学専攻 修了1990 年 株式会社 神戸製鋼所1995 年 神戸大学 工学部 助手2003年 豊橋技術科学大学 工学部 講師2004年 名古屋大学 大学院 工学研究科 講師2008年 名古屋大学 エコトピア科学研究所 准教授2014年 大阪電気通信大学 工学部 機械工学科 教授(現職)