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2016年度 新任先生ごあいさつ26 後援会たより No.37新任先生からごあいさつ工学部電気電子工学科教授中なか瀨せ泰やす伸のぶ先生「集積回路設計のご紹介」 前職の㈱メガチップは一般には知られていませんが、半導体設計ベンチャとして日本最大手で任天堂とともに成長した会社です。新大阪本社勤務で採用されたのですが、千葉市美浜区中瀬にも事業所があります。地名に感じるものがありましたが、やはり1 年間ほどそこで勤務することになりました。すぐ近くにイオン本社と幕張メッセがあり、人工的に区画されたきれいな街です。神田外語大学も近くにあり、地域交流の一環としてフラダンスやベリーダンスサークルがオフィスのあるビルで定期的に公演します。私の年齢からはほほえましく見えるのですが、チケットの入手が困難なほど人気があります。因みに関東では早稲田大学も有名だそうです。 余談ですが、大学生のころ友人の影響で新田次郎氏のファンになり、気象を題材にした小説を読んでいました。ちょうど学んでいた電磁気学で使われる方程式が気象学でも使われていることを知って興味を持ちました。1994 年から気象予報士の制度が始まりましたが、相当な難問でそのうちに勉強しようと思っていました。そうこうするうち、若い女性が多数合格していると聞いて驚きました。なんでもお天気おねえさんでテレビデビューしてニュースキャスタやアイドルを目指すのだそうです。逞しくも柔軟な発想に感心します。幕張のオフィスビルには、その業界では有名な㈱ウェザーニューズの本社があり、ここでも毎年お姉さんのオーディションが開催され関心を集めています。少し違和感がありますが、一度は挑戦したいと思っています。もちろんオーディションではなくて受験の方ですが。 寝屋川にも地縁があり、青春期を過ごしました。当時は新興住宅街でそこかしこに空き地がありましたが、今では見渡す限り家並みが続き、すっかり下町の風情になりました。着任して4 か月が経ちましたが、大学は想像以上に忙しく、感傷に耽る暇もなく慌しく時間が過ぎていきます。それにしても先輩先生方は多忙な日々を難なくこなしていて、その情熱と体力はすごいと思います。 かつては電子回路に興味を持つ少年はラジオ少年と呼ばれていました。自分でパーツを買ってきてアンプとかを組み立てるのです。私も見よう見まねで真空管ラジオに挑戦したことがあります。動作しない上に感電するわで全く歯が立ちません。生兵法で随分と危ないことをしていたものです。今もそうですが日本語の書籍や雑誌は、内容がかなりマニアックで素人が独学で学習するのは難しかったように思います。 就職したときに一念発起して、集積回路(IC:Integrated Circuit)の回路設計を希望しました。当時は回路設計を教える大学はあまり無かったようで同期入社のほとんどが回路設計を敬遠しました。英語の教科書には回路設計の基礎から丁寧に書かれたものがあることが分かり、それで独学しました。その結果、電子回路の設計は系統だった勉強をすれば誰でも理解できるものだとわかりました。 現在ではスマートフォン、コンピュータ、家電、自動車に大量のIC が用いられています。多くの種類のなかでも頭脳の役割を受け持つプロセッサと呼ばれるIC は、1cm 角しかない大きさですが約10 億個のトランジスタが搭載され、個々のトランジスタはウイルス程度にまで微細化されています。 このような大規模なICの開発を可能にしたのがシミュレーションツールの発展です。設計ノウハウも組み込まれ、途上国であっても最先端の製品を作ることができるようになりました。現代ビジネスマンはパソコンができないと仕事ができないように、エンジニアは目的や用途に応じてさまざまなツールが使えなければ実務がこなせません。一方でツールはそれほど便利なので、依存症になってしまう弊害もあります。企業ではシミュレーションを昼夜ぶん回すだけという人が相当数います。 学生のみなさんには、そのようなことがないように電気電子工学の理論をしっかり学び、実際に実験で検証する技術を修得した上で、できるだけ多数のツールに親しんでもらいたいと思います。さらにツールのよいところは、擬似的ですがモノを作る体験ができることです。電子工学の理論は何のためにあるのか、どのように使うのかを理解することができます。 現在の私の専門はIC のハードウエア、つまり「作る技術」です。IC の用途が広がるにつれて「使う技術」が重要になってきており、企業からの求人も多くなっています。特定の機能を実現するためにコスト最小で構成されたハードウエアとプログラムのコンピュータシステムを組み込みシステムといいます。例えば、家電とかロボットの制御に用いられます。今後はこの分野の研究にも力を入れたいと思っています。プロフィール1983 年 立命館大学大学院 理工学研究科 前期博士課程修了1983 年 三菱電機株式会社2003 年 ルネサスエレクトロニクス株式会社2013 年 株式会社メガチップス2016 年 大阪電気通信大学 工学部 電気電子工学科教授(現職)