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2016. Autumn 29新任先生からごあいさつ工学部環境科学科講師田た中なか孝たか徳のり先生プロフィール2003 年 国立鈴鹿工業高等専門学校物応用科学科 卒業2005 年 神戸大学 理学部化学科 卒業2010 年 神戸大学大学院 理学研究科化学専攻博士後期課程 修了( 博士(理学))2010 年 神戸大学連携創造本部先端研究推進部門研究員2011 年 大阪府立大学大学院工学研究科物質・化学系専攻 化学工学分野 助教2016 年 大阪電気通信大学 工学部 環境科学科 講師同 大学院 工学研究科 先端理工学専攻担当教員「工学は“あんじょう”の学問」 本年の4月に工学部環境科学科の講師として着任しました田中孝徳と申します。三重で生まれ、神戸で学び、堺の大学で勤めて、寝屋川の本学へ・・・と大阪文化圏の端っこからど真ん中に近づいてきている経歴をもっています。 着任して以来、「工学部環境科学科って何をしてますの?」とご父兄様方、企業の方々や高校の先生方によく聞かれます。“ 工学” と聞くと、「工業に関わる理系分野の学問」といった印象をお持ちの方が多いかと思います。“ 工学” に対応する英単語は“Engineering(エンジニアリング)”ですが、この英単語には「巧みにやり遂げること」という意味もあります。大阪弁で平易な表現にすると“ あんじょう(=味よく=具合よく)”です。問題に対して“あんじょう”な方法を考える学問が“ 工学” であると私は考えています。すなわち、工学部環境科学科とは環境に関わる諸問題を科学の知恵を用いて巧みに解決する能力を養う学科なのです。 それでは、私が持っている科学の知恵について簡単にご紹介します。私の専門は化学工学(合理的な化学プロセスの開発・設計・操作を目的とする学問)です。その中でも、固液分離工学の研究を日々、進めています。文字通りですが、固体と液体を上手に分離するための学問です。このような分離操作は古くから人類が経験的に用いてきた技術の一つです。例えば、発掘されている紀元前数千年前の資料にはアルコール飲料のろ過の様子が記されています。現代では、この固液分離操作は化学工業だけではなく、バイオテクノロジーやエレクトロニクスなどの近代産業分野で欠かすことのできない技術となっています。 また、これらの技術は身の回りの様々なところでも使われています。例えば、京阪沿線の地域で水道の蛇口から出てくる水は淀川の水ですが、川の水をそのまま飲むわけにはいきませんので、凝集分離や砂ろ過という固液分離操作を含む浄水プロセスを経て、家庭に届けられています。また、私も大好きな日本酒は諸味(もろみ)を酒粕と生酒とに分離することで澄んだお酒となります。この時、外気と触れることで揮発性の香気成分が損なわれ、風味の劣化を引き起こすため、極力短時間で分離することが望ましくあります。しかし、諸味は酵母だけではなくタンパク質やデンプンなどの高分子化合物を多く含むため、脱液操作が非常に難しいという特徴があります。この分離操作は近年、機械化(図1)が進んできているため、外気との接触が少なくなり風味の豊かなお酒が増えています(昔ながらの方法が良いとは限らないのです!)。このような固液分離装置を巧みに使うため、日々研究を行っています。図1 圧搾型フィルタープレスによる清酒諸味の搾り工程 これから大阪電気通信大学で出会う学生さん達に向けて学問の面白さとその可能性が伝わるような教育指導を行うとともに、学生さん達にも協力していただきながら研究を行い、環境に関わる問題を巧みに解決していきたいと思います。研究活動を通じて課題解決能力を身に付けてもらいたいと思います。私の専門分野は、“ 水” に深く関わるものですので、世界中の水環境を守るために日本の高度な水処理技術を継承し発展させていくような技術者(エンジニア=あんじょうやる人)をたくさん輩出していきたいと思っています。