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2016. Autumn 31新任先生からごあいさつ教育開発推進センター特任准教授齊さい尾お恭きょう子こ先生「覚える君くん」から「考える君くん」へ 今年4月から本学の教育開発推進センターに着任いたしました。本学の掲げる「我々は手と頭と心を同時に動かす実践型教育を重視します」という教育理念に深く感じ入るところがあり(教育学者ペスタロッチが信念としたところを大学の実学教育の礎石としているところに本学の今日性を感じました)、本学にご縁をいただけたことを嬉しく感じています。 さて、本稿のタイトルとして冒頭に書かせていただきました“「覚える君くん」から「考える君くん」へ”というのは、国際バカロレア教育i)の第1人者である大迫弘和先生の書かれた本ii)のタイトルからお借りした言葉です。大迫先生いわく「覚える君くん」とは、試験のためだけに学び、その学んだ力を答案用紙の上に発揮し、試験が終わるとその学びは役割を終えるというような学び方をしている子どもたちのことを指し、「覚える君くん」とは「試験が終わったらおしまい君」と言い換えることがでるそうです。また「考える君くん」とは、覚えたこと(知ったこと)を、「考えること」によって理解する(勉強して身に着けた力を試験ではなく現実の生活で役立たせる)ところまでもっていくことができる子どもたちを指すのだそうです。ここでいう「考えること」とは、具体的には「考えること」を核としてさまざまな活動(フィールドワーク、実験、調査、プレゼンテーション、討論、ディベート、レポート作成)を通じて自分なりの意見や考えをもつということだそうです。 ではなぜ、「覚える君くん」と「考える君くん」について私がタイトルとして選んだのかというと、私の所属する教育開発推進センターの役割について説明する際に、この「覚える君くん」と「考える君くん」の例を用いるとイメージがわきやすいと感じたためです。教育開発推進センターの役割は、本学に入学してきた新入生の学びのスタイルを、「覚える君くん」から「考える君くん」へと変化する過程をサポートすることにあるのです。 全国的に、大学に入学したての学生の多くは、試験略歴1997年関西大学商学部(経営学専攻)卒業。私立中高一貫校での教諭、京都市教育委員会研修講師等を経験後、2010年関西大学大学院心理学研究科認知・発達心理学専攻博士課程前期了(修士(心理学))。関西大学教育開発支援センター研究員を経て、2016年まで国立大学法人島根大学教育開発センター准教授。のために様々な「知識」を「覚えること」を中心に学んできた人たちです。しかし、大学での学びの目的は、「知識」の「つくりかた」を学ぶことにあります。「知識のつくりかた」とは、研究・開発の手法と言い換えるとわかりやすいかもしれません。つまり、大学の学びの目的とは、様々な研究・開発領域で活躍されている先生方とともに探究活動を行うことで、知識がどのようにつくられていくかについて理解し自らも実践できるようになることだと言われています。 「覚える君くん」であった新入生が「考える君」へと変化し、学部学科の先生方や先輩方とともに研究・開発に参加していけるようにサポートする、これが教育開発推進センターの果たす役割なのです。具体的には、1・2回生が受講するカリキュラムや授業科目のデザインを、より「考えること」を核としたさまざまな活動(フィールドワーク、実験、調査、プレゼンテーション、討論、ディベート、レポート作成等、最近ではこれらをアクティブラーニングと呼んでいます)となるように見直したり、学生がより学びやすい学習環境を学内に整備したり(教室と自宅の間に、自由なスタイルで自学習に取り組める空間(ラーニングコモンズ)の設置等)というところがセンターにおいて私の担う役割となっています。 私はこれまで、「ひとはどのように学ぶのか」についての認知・発達心理学の研究をしてまいりましたので、その知見を活かしつつ、本学の学生の学びを支える活動に邁進したいと考えています。どうぞよろしくお願いします。i) 国際バカロレア機構(ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムで、子どもの年齢に応じて4 種類のプログラムを提供している。このうち16 歳~ 19 歳向けのプログラムは、数学など6 科目や論文などのカリキュラムを2 年間履修し、最終試験に合格すると、世界2 千校以上の大学への入学資格や受験資格が得られる。日本の高校生たちがこれからの世界と向き合って生きていける力を育む教育プログラムだとして注目されている。ii)大迫弘和『アクティブラーニングとしての国際バカロレア~「覚える君くん」から「考える君くん」へ~』(2016)日本標準