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2016年度 新任先生ごあいさつ32 後援会たより No.37新任先生からごあいさつ総合学生支援センター自立支援室 室長特任准教授高たか橋はし和かず子こ先生「多様な人のあり方を尊重する」 私は、今春総合学生支援センターに着任いたしました。本学での私のミッションは、大多数の学習スタイルとは異なるために、就学やキャンパスライフに難しさをもつ学生を、支援する自立支援室のシステム構築と、学生を専門的に支援できるスタッフ・教職員を育成することです。 私は、本校にこのミッションを頂き招いていただいたことに、大変感謝いたしております。 私の専門は、発達障害児者の支援、支援者養成、コミュニケーション障害支援、コミュニケーション・ソーシャルスキル支援への語用論的アプローチ(語用論とは、コミュニケーションを図る人と人との間で、互いの意図がどのように伝達されているか、もしくは伝達、読み取りに失敗しているかを明らかにし、研究を行う言語学の専門領域)です。 私が、最初からこのような支援や研究領域を目指していたわけではありません。大学院までは「環境考古学」(地理学)という分野の研究を行い、研究者を目指していました。そんな時に授かった息子が、自閉症に生まれました。眠ることの困難さ、激しいこだわりにパニック、母親の私とでもやり取りができないことなど、既に生後6か月の段階で、「生活すること」が大変な状態になっていました。息子は、現在30歳で大学院のD. 6回生です。特異な能力はありますが、最先端レベルを求められる論文作成に苦手さをもっています(息子を育てた20年の記録を『高機能自閉症児を育てる』(小学館101新書)に著しています。ご興味のおありの方は、もしよろしければお読みいただければ幸いです)。 息子を育てた30年前には、息子を助けられる療育・医療・教育リソースはほぼ皆無でした。私は、息子を助けられる母になりたいとの思いで、最初は独学、後に支援の方法を系統的に学ぶために、大阪教育大学特殊教育特別専攻科に入学しました。それまでにも2つの研究会に入り、支援のための研究と実践のトレーニングを受け続けました。その後大学や地域の行政機関で、0歳から45歳までの様々な障害のある方々の支援にかかわり、多くのことを学ばせていただきました。その中で、私は、息子を支え育てた記録をエッセイとしてではなく各時期に論文として表現することを選びました。論文として記録(サイエンス)を残せば、障害をもつ他の子と親の助けになるかもしれないこと、子どもにかかわる大人を変えることができるかもしれないこと、支援の乏しい施策を少しでも変えることができるかもしれないと考えたからです。このような経過をたどる中で、私は、思いもよらず支援の臨床と研究の専門家になっていました。息子は、日本で初めて大学での発達障害学生支援システムを作っていただき入学した学生となりました。これをきっかけに、他大学でも発達障害学生の支援は徐々に拡がっていきました。それが11年前のことです。 日本中、どこの大学にも表面的には理解が難しい発達障害のある学生は、多く就学していますが、その支援はまだまだ進んでいません。総合学生支援センターで、私のような専門職の教員を配置している大学は少なく、本学で働かせていただけることに大きな希望と喜びを抱いております。 息子が、大学でぶつかった困難から、また他の支援を行った方々から学ばせていただいたことを基に、是非本学で系統だった支援が行なえるように、そして障害学生が社会で居場所を掴んで生きていける人になれる支援システムを構築したいと考えています。本年は、自立支援室に私以外のスタッフ配置がないところからのスタートでしたので、まずは本学のことを知るためにも、敢えて私が学生の直接支援に当たっています。その中で、私がまず素晴らしいと思ったのは、本学の教職員の皆さんが、多様な学生に対して、既に工夫を重ねよく支援を行ってこられていることでした。理系に集まりやすい特性のある学生にこれまで数多く根気よく接してこられたこと、教職員の皆様が本学の特徴ともいえる「サイエンス」の発想をもっておられたことが、その背景にあると私は考えています。これは、本学が他大学にも誇れる「面倒見の良い大学」であることに繋がることだと思います。 本学で、さらに発達障害学生などの支援、支援者養成のサイエンスとしての私の専門性を活かせていただければ、就学・キャンパスライフに何らかの困難さをもつ学生の支援方法、教職員の皆様の潜在能力の更なるUP に貢献させていただけると思います。大学全体で「多様な人のあり方を尊重」し、「多様な能力を活かせる大学」になれるよう、少しでもお役に立ちたいと存じます。プロフィール和歌山大学・大阪教育大学非常勤講師、金沢大学「子どものこころの発達研究センター」特任助教、大阪大学大学院[ 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学連合小児発達学研究科]金沢校 助教、博士(学術)[ 金沢大学]、言語聴覚士、臨床発達心理士スーパーバイザー、特別支援教育士スーパーバイザー