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2021年度 新任先生のご紹介・ごあいさつ新任先生インタビュー工学部電気電子工学科准教授濱はま田だ俊とし之ゆき先生時代に左右されない普遍的な知識と実践力を…― 先生のご専門である「高電圧工学」と「電力工学」とはどのような学問ですか?濱田 自然界に存在する光や熱、風などのエネルギーからいかに効率よく電気を生み出し、いかに損失なく使う人のもとに届けるかを追求するのが「電力工学」です。そしてそれを実現する過程の中で高い電圧にするという方法を用います。高い電圧に物質がさらされると様々な物理現象が起こります。そのメカニズムや高電圧を様々な産業へ応用することを学ぶ学問が「高電圧工学」です。その中で私の研究室では「太陽光発電の安全性を高める研究」に主に取り組んでいます。― 太陽光発電と聞くと、山の斜面や住宅の屋根に太陽光パネルが並んでいる景色が目に浮かびます。近年、ずいぶん普及してきましたね。濱田 自治体や国の補助金制度なども後押しして、ここ10~15年でかなり普及してきたのは皆さんもご存じと思います。太陽光発電は光さえあれば電気を生み出すことができる利点から、発電時に二酸化炭素が発生する火力発電や放射性物質が発生する原子力発電に比べると環境に優しい発電方法と思われています。持続可能な脱炭素社会の実現という観点からも注目される発電システムですし、近年はSDGs が目指す目標にも通じることから良いイメージが先行しています。しかしながら、先ほど述べた光で発電するという利点は裏を返すと欠点でもあります。太陽光が当たり続けている限り、電気が生み出されるのを止められないからです。例えば、太陽光発電が設置された建物で火災が起きたとき、消防士が消火活動のため水を放水して消火しようとすると太陽光パネルで発電した電気で感電してしまう事故が起きてしまったことが実際にあります。また、太陽光発電が普及してきたこともあり老朽化した設備も増えてきています。老朽化が原因での故障も同じく火災や感電事故のリスクとなりえます。さらに、最近は大規模自然災害が毎年日本のどこかで発生しています。土砂崩れで太陽光パネルが流されたり、強風で飛散する事故も発生しており、このような被災した設備をうかつに触ってしまうと感電してしまうリスクがあります。光が当たると勝手に発電してくれるという特徴は『安全』という観点から見るとリスクにもなるのです。― 太陽光発電は環境に優しく、光熱費の削減にもつながるという良いイメージしかなかったのですが、そういう一面もあるのですね。濱田 感電事故だけでなく土砂崩れの原因になったり、「ギラギラした巨大なパネルが景観を損なう」と地域住民とのトラブルになるなど、一部では「太陽光発電= 悪者」のように思われてしまっている現状もあります。こうした社会情勢を背景に私が現在取り組んでいる研究は、太陽光発電が原因で人の命や生活に悪い影響を与えるようなトラブルを防ぐために太陽光発電が事故や故障になった時でも人々の安全を確保できるような設備の構造設計や安全システムを開発しています。太陽光発電が本当の意味で健全に普及し、成熟した主要な電気として人々が安心・安全に利用できることに貢献するべく研究を進めているところです。― 濱田先生は本学に来られるまでは公務員のご経験があるとお聞きしました。濱田 大学院を修了して宮崎県庁の職員になりました。電気系の技術職員として水力発電のためのダムの防災管理や通信設備・河川の管理といった保守の仕事をしていました。その後、山口県の高専で高電圧電力工学専門の教員として採用され、7年間教えていました。実際に電柱や鉄塔を昇って点検などをしていた経験や資格を取得した経験は、将来の研究者・技術者を目指す学生さんたちへ向けて講義の中で紹介するなど役立てています。― この春、准教授として着任されましたが、コロナ禍のため生で学生と触れ合う機会は少ないと思います。そんな状況ですが、本学と学生に対する印象をお聞かせいただけますか?濱田 工業系の大学ですので、高専と雰囲気が似ていると思いました。驚いたことは、実験施設が広くて設備が充実していることです。学生に関しては、熱心に授業に耳を傾ける真面目な人が多いと思いました。本学は資格取得に力を入れているのが特色のひとつですが、学生もそれに応えるべく積極的に取り組んでいますね。前向きに頑張っている学生が多いと思います。― これから本学で学び、数年後には社会に出ていく若者に向けてメッセージをお願いいたします。濱田 大学4年間、あるいは大学院に進学する人は616 後援会たより No.47